「JOA研究委員会フォーラム」開催概要報告

「JOA研究委員会フォーラム×ファッションスタディーズ」

【開催趣旨】

2020年東京大会に向けてオリンピック・パラリンピックへの関心が高まる中で、JOAの中長期目標である「オリンピズムの普及と浸透」という課題に照らし、JOA会員や関係者の協同によるオリンピック・パラリンピックをテーマとした研究・調査報告等を広く紹介していくことを目的として、今回、以下のような「JOA研究委員会フォーラム」を特別に開催することにいたします。

【開催概要】

・共  催:NPO法人日本オリンピック・アカデミー(JOA)オリンピック研究委員会、

ファッションスタディーズ

・日  時:2017年1月28日(土)13時~17時

・会  場:田中千代ファッションカレッジ (東京都 渋谷区 渋谷1-21-7)

https://www.tanakachiyo.ac.jp/access/

・参加者数:53名(内訳:JOA会員10名(内学生1名)、一般43名)

・実行委員会:今井明良、深山計、飯塚俊哉、篠崎友亮の各氏

 

【発表概要】

(開会挨拶)
・JOAについて: JOAオリンピック研究委員会 舛本直文委員長
・ファッションスタディーズについて:ファッションスタディーズ 篠崎友亮代表
・田中千代ファッションカレッジについて:田中千代ファッションカレッジ 佐藤崇先生

 

1)「1964年オリンピック・ユニフォームの研究」
   安城寿子さん(JOA会員:服飾史家、文化学園大学ほか非常勤講師)

1964東京大会の開会式で着用した公式ユニフォームのブレザーについて、通説ではVANジャケットのデザイナー石津謙介氏のデザインによるものとなっており、様々な記事、紹介等でもそうされていた。 実際には、当時まだ主流ではなかったが、ヘルシンキ大会等のユニフォームをデザインした仕立服日彰堂のテーラー望月氏が、秩父宮様から「ブレザーとは国を表す色で作るものである。」との言葉を基に悩みながら作り上げたものであった。安城氏は、当時の資料や関係者の証言からその事実を明らかにし、正しい歴史を明らかにした。「新しいものを作るには、過去の歴史から学ばないと良いものにならない。」という安城氏の言葉は、今後の物作りにとって示唆に富むものであり、ファッション業界を含む参加者に感銘を与えるものであった。 ※研究発表の資料として、1964年日本選手団の実物のユニフォームを紹介した。

 

2)「二つのオリンピック-スポーツがつないだ日系社会-」
   小嶋茂さん(JICA横浜 海外移住資料館 学芸担当)

JICA横浜が運営する海外資料移住館の学芸員である小嶋氏からは、これまで海外に移住した日系人の暮らしと文化を紹介したこれまでの展示紹介を導入し、日本からの移住者、その子孫となる「日系人」に取ってスポーツがアイデンティティを保ち続ける大きな役割を果たしてきたという事実を発表された。日系人のコミュニティにとって、「運動会」が絆と楽しみとなり、その後通称「日系オリンピック」をはじめとしたスポーツ大会が南米を中心とした各国の日系コミュニティを中心に開催され、その中から多くの日系人オリンピアンも生み出す事にも繋がっていた。また日本の水泳界の古橋、橋爪選手達の南米遠征から、日系人のメダリストも生み出したという事実も掘り起こした。その他、様々なスポーツが日系人の中で行われており、野球、相撲等でプロ選手も輩出してきた。「日系人は自分達のルーツを大切にし、とりわけ「お蔭様」という言葉を日本も含めた先祖からの継承として大事に受け継いでいる」という小嶋氏の言葉は、日本に暮らす我々にとっても忘れかけているものの重要な視点であろう。
両発表を聞いている会場の雰囲気は、新しい学びの知的好奇心にあふれており、90分の講義の2本立てという日頃研究発表の聴講には慣れていない方々にとっては、ハードな内容とも思えたが、あっという間の4時間となった。講師への質問も、講義内容への理解を深めるものであり、参加者の学びの深さを感じられるものであった。

 

(質問抜粋)

Q1:開会式用のブレザーのデザインコンセプトは、競技用のユニフォームとも共有されていたのか?
A1:デザインチームは、開会式、スタッフ、競技ユニフォームと3つに分かれており、それぞれにデザイナー、生地、製作が分かれていたので、おそらくコンセプトは共有されていないと考えられる、この後さらに研究を進めて明らかにしていく予定である。

Q2:日系オリンピックでは、障害者スポーツは行われていたのか?
A2:現在の研究結果では、障害者スポーツが行われたという事実は確認されていない。

Q3:日系オリンピックへの出場への規定、例えば標準記録の存在等はあったのか?
A3:大会の内容の正式な記録はあまり残っていないのが現状であり、正式な規定の存在は明らかではないが、陸上競技の記録で見ると100メートル走で10秒1という記録もあり、オリンピックに出場した選手もこの大会に出場していた。ただ大会の内容については、更なる研究の余地がある。

休憩時や講義終了後には、多くの参加者が研究資料として展示された藤崎テーラーから寄贈されたJOA所蔵の実物の1964東京大会の赤いブレザーを興味深く観察する姿がみられた。また参加者にファッション、文化関係の方も多かった事から会場の至るところで、名刺交換やご挨拶等が活発に行われた。

 

・交流会:参加者17名
フォーラム後の交流会には17名が参加。二人の講師を囲みオリンピック、スポーツと文化、芸術についての話で大いに盛り上がり、更なる学びと交流の場となった。

 

・アンケート:回収数20件
参加者からのアンケートは20名に記入を頂き、内容として学びへの感想、意見の記述が多く、ファッションスタディーズのスタッフが驚く程であった。以下その主な結果である。
・今回のプログラムはいかがでしたか? 非常に満足 5 満足12  ふつう1 無回答2
・その理由(抜粋)
「新しい発見」「オリンピックを文化の面からみるのが良かった」
「オリンピックの裾野の拡大に感銘した」
「スポーツがつなぐ新しい価値観を知れた(スポーツがつなぐ日系社会)」

 

【所感】今回のフォーラムを通して、改めてオリンピックの多様な面と多くの分野、特に文化活動をされている方々の高い関心を感じる事となった。今後も、様々な分野との学びの交流を通してJOAの中長期目標である「オリンピズムの普及と浸透」に貢献する機会を考えていきたい。

 

【問い合わせ先】
日本オリンピック・アカデミー事務局
e-メール:inform@olympicーacademy.jp
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