オリンピズムにもとづきジェンダー平等および多様性の尊重をめざす JOAステートメント

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オリンピズムにもとづきジェンダー平等および多様性の尊重をめざす
JOAステートメント

2021年2月24日
日本オリンピック・アカデミー 理事会

 オリンピック・ムーブメントは、19世紀末にピエール・ド・クーベルタン(以下、クーベルタン)が提唱して以来、戦争による中断、政治や商業主義や勝利至上主義の負の側面、さまざまな形態の差別との闘いなどの困難に直面してきました。その過程で、世界の平和とより良い社会の構築をめざすムーブメントへの賛同は広がり、国際オリンピック委員会(IOC)には現在206の国と地域が加盟しています。日本は、クーベルタンの要請を受け、1909年に嘉納治五郎がIOC委員に就任して以来、オリンピック・ムーブメントに参画してきました。

 平和でより良い社会の基盤は、差別や排除なく、異なる意見を持つ人々が互いを尊重しながら対話をすることによって形成されます。この基盤づくりのために、近年のIOCが最も力を入れてきた課題のひとつがジェンダー平等の達成です。2014年版以降のオリンピック憲章「オリンピズムの根本原則」には、性別および性的指向を含む、あらゆる形態の差別を認めないことが明記されています。(文末「参考」)

 オリンピックの根本精神である「オリンピズム」は、人生哲学、すなわち「人間としていかに生きるか」という問いかけに対する指針であるとされています。単にオリンピックの競技の場面だけではなく、私たち一人一人が日常生活の中で自らに問いかけ、それぞれの違いを認めながら思いやりをもって生きていくための道しるべがオリンピズムです。

 人類のおよそ半数に対する差別や不平等の解消は、オリンピック・ムーブメントがめざす世界の平和とより良い社会の構築に欠かせない達成課題です。また、そもそもスポーツは、公平で公正でなければ成り立ちません。その意味で、スポーツは民主主義的な社会を象徴する文化であるといえます。

 一方、スポーツ界では、組織の構成員がリーダーに対して異論を唱えることや、自らの言葉で意見を主張することが抑圧される傾向が根強く残されています。こうした抑圧は、多くの場合、ジェンダーにもとづく不平等や上下関係によって生じています。そのひとつの事例が2021年2月に問題視された東京2020大会組織委員会会長(当時)の発言でした。この出来事は、組織委員会のみならず、すべてのオリンピック関係者に、より一層オリンピズムを深く理解し、日々の行動に結びつけなければならないことを再認識させるものでした。

 日本オリンピック・アカデミー(JOA)は、1978年の設立以来、オリンピズムにもとづきオリンピック・ムーブメントを展開するという使命を掲げてきました。また、この使命のために、研究と教育の両面から「オリンピズム」の重要性を広く世に発信してきました。

 JOAは、ここに改めて、オリンピズムおよびオリンピック・ムーブメントの意義を確認します。そして、ジェンダー平等の達成、多様な個人が尊重され共生する社会、平和な世界の構築に力を尽くすことを誓います。

 最後に、昨年来からのコロナ禍における医療従事者や大会組織委員会の皆様の計りしれないご尽力に、心から感謝の意を表します。

(参考:根本原則6「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、 宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」)

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