第230回JOAコロキウム開催報告
・日 時:2022年1月20日(木):18:00-20:00
・場 所:Online Zoom会議
・参加者:11名
・テーマ:「東京2020大会」を振り返る:
「オリンピズム」のスポーツ、文化、環境、平和運動の側面から
Ⅰ.情報提供と意見交換
1.「東京2020大会」の文化プログラム
東京2020「Olympic Agora」の紹介映像:”First Olympic Agora at Tokyo 2020: A confluence of art, culture, sport” https://www.youtube.com/watch?v=wrTOO1R906Q北京大会でも実施予定(舛本)
2.「東京2020大会」を振り返る:オリンピズムの「平和運動」の側面から(情報提供 by 野上委員)
<情報提供の概要:文責舛本>
・「東京2020大会」のために実施された平和運動には、オリンピック休戦決議、聖火リレー、開・閉会式でのメッセージ発信、PEACE ORIZURU、難民選手団編成、オリンピック休戦の壁画サイン、国連のSDGs連携など、数多くあるが、すべて必要なのか? IOCが求める平和貢献とはなんであったのか? 東京大会では見えてこなかった。
・コロナ禍で、「安心・安全な大会」とはほど遠い状況のもと、「開催すべきではない」という民意を無視し、「とにかく開催する」という独裁政治のような対応の仕方は問題であった。
・女性蔑視発言、障がい者への差別発言、ホロコーストに対する不適切発言など、日本の人権意識の低さを露呈し、開催国としてオリンピズムを体現するという意識とその準備不足が深刻な状況を引き起こした。
・これらの問題は、SNSで過去の問題発言を掘り起こすオリンピック反対派によるあら探しだけでなく、「日本社会全体の人権軽視」という病理を象徴したものである。
・日本の歴史教育では、知識を教えてもそれが現代社会でどういう意味を持つかを導くまでには至っていない、という問題指摘と、日本ではホロコーストや人権問題への認識が甘く、起こるべくして起きた問題という識者の意見の紹介。
〇総括:
①そもそも「オリンピック休戦」は周知されていたのか?オリンピック開催に伴って何故休戦期間を設けなければならないのか?それは現代社会に戦争の悲劇を二度と繰り返してはならないという観点からである。
②オリンピックの場で、何故人権尊重しなければならないのか?多様性とは何か?それは現代スポーツにおける公平性、平等、自由を求めていくという観点から必要である。
③オリンピックでは平和運動を多く展開する必要はない。色々手を付けすぎて経費や人の能力を多く使うことになる。
④結論:オリンピックの平和運動は、オリンピックの歴史認識だけではなく、起きた出来事に焦点を当て、その歴史が現代社会においてどのような意味を持つのかを子どもたちに学ぶ機会にすべき。
<Q&Aおよび参加者によるコメント>
・Q1:「国際赤十字は関連者も含め4回もノーベル平和賞を受賞しているのに、IOCは何故受賞できないのか?また、IOCが平和を主張するのはいつ頃からなのか?」
Ans&補足:名目だけの平和運動でその実は金儲け団体に成り下がっているからである(ノーベル平和賞の受賞を希望はしているが…)。平和希求はIOC設立時のクーベルタンが主張してきているが、憲章では1908年から。
・Q2:「オリンピックの平和という建前を背負わせても意味がない。建前は不要で、オリンピックらしいオリンピックとは?世界中が賛同するようなオリンピック大会がどうあるべきかを真剣に考えるべきである」
Ans:オリンピックが力を持っている。光と影の両面があるが、今は陰の面ばかりが多く出ている。
・ノーベル平和賞を受賞できないのは、IOCが自分達の保身と利益しか考えていないから。オリンピックを存続させることしか考えていないため、現在ではロシアや中国にすり寄っている。また、ビジネスコンテンツに成り下がり、国威発揚、巨大化・肥大化し、大都市や強権的な国しか開催できなくなっている。
・IOCに揺さぶりを掛ける必要があるが、アスリート達には訴える力がなくなってしまい、民主国家ではオリンピックを開催できなくなってしまった。
・バッハ体制は批判されるべきである。特に国際政治への対応が不十分である。5年前には南北朝鮮合同チームを編成させたが、今回の北京大会では何も行動していない。また、ロシアとウクライナ問題にも何も対応できていない。2014年のソチ大会のクリミア半島に侵攻して併合した時にも何もできてはいないが、、、。
Ans:国と国との関係が前面に出すぎである。スポーツの祭典であり、国が全面的に出てくることは問題である。
・オリンピックは国の所管ではないはず。NGO団体であるはずのIOCは市民団体であるはず。市民の会費制で組織運営すればIOCは自由がきくはず。
・オリンピックを支えるのは私たちファンであるはず。オリンピックを愛好するものの願い。国の巨額予算に頼らざるを得ない現状が問題。夢物語ではなくクラウドファンディングなどで開催できるようになると良い。
・Q3:旧ユーゴスラビアの内戦時のIOCの対応は?
Ans&補足:IOCによる国連の働きかけによって、ボスニアヘルツェゴビナや旧ユーゴ圏の選手団が1992年バルセロナ大会に参加できる道を開いた。これが近代オリンピックでのIOCの「オリンピック休戦」の始まりとされる。
・IOCは「クーベルタン賞」を設置してオリンピックにおける平和運動面で貢献した人を表彰すべき。
・国旗が政治的に利用されている現実がある。一例として、「東京2020大会」ではアフガニスタンの国旗使用に関して問題があった。Enlighted nationalism(洗練されたナショナリズム)という視点が重要である。因みに、過去にも国旗や国歌を用いない方式が検討されてきてはいるが、、、。
・「特に、個人競技では国旗を掲揚することには反対である」という意見も出された。選手団の旗にするかNOC旗にするか? など国旗使用に関しては課題がある。
・nation state国民国家が成り立たなくなっている現実がある。さらにオリンピック・パラリンピックが利用されている感がある。物事には表裏があるはず。異文化交流や国際交流をどう展開するか? 特に今大会ではコロナ禍のため無観客方針などで大会中にできなかったことを今後どう展開できるかなど重要な視点である。
・もし「オリンピック・パラリンピック人権共同コミュニケ」が発信でき、それで中国に働きかけていたらどうなっていたであろうか?「平和の権利」というものを未来の人権として議論中であるが、、。
・オリンピックには複雑な問題があること、しかもステークホルダー毎に問題が違うこと。その中で、IOCがすべき平和貢献とは何か?IOCは如何にあるべきか? 誰にどのような責任があるのか? など難しい問題である。
・「積極的平和」の立場から「2022北京冬季大会」で臨むと危険である。特に新疆ウィグルの問題で抗議するとリスクあり。平和運動VS政治問題の対立もある。
・ジェノサイドであると主張する一方で、選手達に箝口令を敷くとなれば、一体何のためのオリンピックか?という意見も。
・電通問題ややりがい搾取などとの批判がある中で、何故ボランティアするのかなどの声もあったが、複雑な思いで大会に関わった。2001年の秋田のWorld Gamesでは大会事務局が国別のメダル数を発表するようになり、さらにオリンピックでも、「東京2020大会」ではIOCの憲章改正で国別メダルカウント数を公表することに変わってしまった。
・(以下、舛本の私見)
①オリンピックと他の国際スポーツ大会の違いは何か?そこをしっかり確認する必要がある。スポーツをすれば平和構築の目的を達成できるわけではない。オリンピックでの様々なイベントやプログラムは平和を志向するものである。
②「オリンピック休戦」への十分な理解は?国連とIOCが連携して、ただ単に戦争や紛争がない状態以上の、人権保護やSDGs連携、差別撤廃など、「積極的平和」と同様な活動を志向し、国連加盟国にそれを求めているのであるが、、。
3.選手による抗議のリスク報道の紹介
「2022北京冬季大会」で人権侵害などに選手達がプロテストすると処罰される危険があるのでしないように!報道
1.https://www.infobae.com/aroundtherings/articles/2022/01/19/athletes-advised-to-remain-silent-on-human-rights-as-beijing-2022-warns-against-behavior-counter-to-the-olympic-charter/
Athletes advised to remain silent on human rights as Beijing 2022 warns against behavior counter to the Olympic Charter(ATR January 19, 2022)
2.https://news.yahoo.co.jp/articles/3e2f6068cd53c7fdd9df8f5de186f888293ec29e
北京五輪で人権問題巡る発言自粛を、選手に専門家が警告 (REUTER 1/19(水) 8:16配信)
第231回JOAコロキウム開催案内
・日 時:2022年2月9日(水)18:00-20:00(第3水曜日ではありません。ご注意下さい。)
・場 所:Online Zoom会議
・中心テーマ:「2022北京冬季大会」関連
・その他の内容:
①オリンピック・パラリンピック関連情報の提供(各自、何かあればPC上で共有できますので、ご準備ください。)
②意見交換:今回の共通テーマは「東京2020大会」「2022北京冬季大会」「2030札幌冬季大会招致」などとします。参加者の皆様から何かご希望があればお寄せ下さい!
③映像共有:何か時間があれば考えます。YouTube上でも探せます。ご希望があれば考慮します。
④残り時間:フリーディスカス。
⑤終了後:online乾杯など自由に!
〇定 員:15名程度
(但し事前登録制:参加予定の方には、後日Zoomへの招待とID、PW、URLをお送りします)
〇会 費:無料 (Zoom利用の経費はJOA負担です)
〇情報交換会:(ドリンクは各自で準備してください)
☆入室・退室は自由です!
☆通信環境の状況次第によっては、入室できない、あるいは中断する可能性もあります。どうぞご理解ください。
◎申込先:JOAコロキウム申し込みサイト:
joa_colloquium*olympic-academy.jp(*は小文字の@に)
☆ただし、このJOAメルマガに直接の返信は避けてください。対応できません!
◎申込み締め切り:
2022年2月6日(月)17:00