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台湾・イブニング

2021年7月26日(月)17:00-19:00

テーマ:台湾におけるオリンピック・ムーブメント
     (台湾オリンピック・アカデミーの活動やオリンピック教育の紹介)
コーディネーター:舛本直文+荒牧亜衣(JOA会員)
講師:Leo Hsu(許 立宏)博士+Felix Chan氏&Kathy Ko先生

台湾イブニング

参加者33名(最大時)
 参加申込み者数:国内24名、海外33名)

概要:台湾のオリンピック研究の第1人者による台湾のオリンピック・ムーブメントについての紹介。後半は台湾の高校教員2名から、彼らが実践しているオリンピック教育の様子を紹介して頂きました。

3名の登壇者が台湾におけるオリンピック・ムーブメントに関する報告を行いました。報告のタイトルは、下記の通りです。

  1. 台湾におけるオリンピック教育ムーブメント Dr. Li-Hong (Leo) Hsu, National Taiwan University of Sport(NTUS)
  2. オリンピックとの出会い:オリンピックはどのように私の人生を変えたのか Felix Chan, Taiwan International Sport Volunteer Association
  3. 台湾におけるオリンピック教育の実践 Chia-Ling (Kathy) Ko, National Taitung Junior College

Dr. Li-Hong (Leo) Hsu先生からは、台湾オリンピック・アカデミー(CTOA)の活動報告、高等学校における教育実践に加え、2011年から教育省と台湾オリンピック委員会の支援を受けて実施されてきたISATCについて、大学でのオリンピック教育実践やオリンピック教育センターの活動について紹介がありました。

 International Sports Affairs Training Course)

CTOAは、1978年に設置されました。同年にセッションを開始し、これまで43回開催され、1000人以上が参加しています。IOAセッションにも参加者を毎年派遣しており、こうした業績に対してCTOAは、2019年にIOAのアテナ賞を受賞しました。CTOAでは、“Excellence, Friendship, Respect”のオリンピズムの中心的価値を重視するとともに、IOAのテーマに台湾ならでは文脈で各セッションにローカルなテーマを付け加えながら活動を展開しています。これまで開催されたセッションの報告書はオンラインで閲覧できるようになっているそうです。
現在、CTOAでは、若い世代を対象とした活動に力を入れており、高校生に対して、エリートアスリートから体験談を聞き、その経験を共有できるようなプログラムを提供しています。また、ISATCは、国際的なスポーツ組織や国内スポーツ団体で活躍できる人材育成を目的として実施されているプログラムです。通常時は、4〜5日間かけてセミナープログラムを実施しています。TOCOGのメンバーも招聘してレクチャーをしたこともあるそうです。
Leo先生は、英国で学位を取得された後、帰国した2003年頃から、台湾国内の大学にてオリンピック教育の実践に携わってこられました。大学にオリンピック教育に関連するコースを新しく設置することは決して簡単なことではなかったそうですが、まずはテキストを準備することから着手しました。オリンピック・ムーブメントのビジョンやミッションをあらためて問い直しながら、5つの教育テーマ(peace, ethics, multiculturalism, aesthetic, internationalism)を設定し、各テーマを3回行い、それに加えて導入のための授業を3回行う18週間のコースを構築したそうです。実際の授業では、集団形成からスタートし、専門家の講演を聴講するだけでなく、ディベートや映画鑑賞も行っています。
現在のLeo先生の勤務先であるNTUSでは、オリンピック教育に関する展示を2020年から開始しています。このプロジェクトには、学生自身が参加することによって学びを深めています。200名以上の学生が37のグループに分かれて、展示に向けて活動したそうです。400畳以上の空間を3つのゾーンで分けて、各グループが考案した展示を行いました。NTUSには今年、開学60周年を記念して、オリンピック教育センターが設置されたことも報告されました。Leo先生は、Glocalizationをキーワードに、ダイナミックなアプローチ、クリティカルシンキング、国際的な視点、平和教育のプログラムの必要性を提唱され、今後も継続的に異文化を超えて、学び続ける機会を設けることの重要性にも言及されました。

Felix Chan先生は、自身とオリンピックとの関わりについて紹介しながら、現在取り組まれているスポーツボランティアに関する活動についてご報告いただきました。これまで、Felix Chan先生は、2004年アテネ大会、2016年リオデジャネイロ大会にボランティアとして参加しました。自身の経験を生かし、台湾の各都市にボランティアチームを組織し、将来的にオリンピックをはじめとする国際的なスポーツイベントにボランティアに参加することを目指しているそうです。

Kathy Ko先生からは、台湾の体育の教科書に掲載されているオリンピック・ムーブメントに関する内容について報告がありました。オリンピック競技大会やオリンピックシンボルの解説のほか、古代ギリシアにおけるスポーツについても紹介されており、日本と同様にポスターやロゴをデザインしたり、古代オリンピックの種目を体験したりする活動も教科書で取り上げられていました。また、パラリンピックの競技種目体験についても最近取り組んでいるとの報告がありました。

3名の報告の後、参加者との意見交換を行いました。台湾でオリンピック・パラリンピック教育を展開する際の課題や教員の反応について、日本の現状を踏まえた質問がありました。日本と同様に、教育内容のみを紹介するのでなく、教育理念を共有していくことが重要だとコメントがありました。また、レオ先生が実施されている大学でのオリンピック教育について、5つのテーマを設定した背景についても確認がありました。レオ先生から、東アジアの現状や多様な文化が存在する台湾の事情を考慮して設定したと説明がありました。また、CTOAのセッションに関して、若者やメディア、アスリートなど対象に応じてテーマは設定をどのように行っているのかについても意見交換がなされました。
本セッションの最後は、台湾ビールならずもジャスミンティで乾杯して締めくくりました。

(文責 荒牧亜衣)

主催:NPO日本オリンピックアカデミー(JOA)
    https://olympic-academy.jp/