ノルウェーのオリンピック・ムーブメント:リレハンメル&オスロのオリンピック視察
執筆:舛本直文(首都大学東京特任教授/JOA副会長)
9月5日 オスロのノルウェー・スポーツ大学に隣接したOlympia Toppenの見学
国際スポーツ哲学会(IAPS)のレジストレーションを済ませると、スポーツ大学構内の見学と近くのSognsvann湖の見物に。多くの子どもたちや若者達が自然の中で校外授業をしているようであった。綺麗な景色の中を多くの人たちがジョギングやクロスカントリー走をしていた。冬はクロカンでガンガン走る文化なのだろうと想像する。歩く人もバイクの人もいて、多くの人たちで賑わっていた。散策を続けると、偶然ノルウェー・オリンピック委員会のトップトレーニング施設に行き当たる。中に入ると宿泊施設が沢山併設されたトレーニング施設であった。冬のクロカンのトレーニング拠点であろう。たまたまラッキーに出会ったので、入り口で記念写真を撮っておいた。
9月6日:リレハンメルのノルウェー・オリンピック・ミュージアム見学
地下鉄でオスロ中央駅に到着。自販機で9:34発のリレハンメル行きの往復チケットを購入。帰りは17:05の予定。ローカル線の普通で片道で426クローネ(約7,000円)だ。結構高い。
リレハンンメルでは、先ずノルウェー・オリンピック・ミュージアムの見物。2016年YOG後の展示と平和関係の展示がどうなっているかの情報収集である。時間があればジャンプ台まで足を伸ばし、聖火台も写真を撮るつもりだったが…。
オスロ中央駅からリレハンメルまで電車(R10)で2時間10分。リレハンメル駅のインフォメーションで地図をもらい、徒歩でどれくらいミュージアムまでかかるかを確認する。15-20分というので、雨も降っていないので歩くことにする。2年前に来たことのある町、その時も大津君と一緒に徒歩であちこち歩き回っているので、様子はかなり分かっている。懐かしい風景があちこちにあるが、冬と違い、道に滑り止めの砕石がないのが不思議である。
ノルウェー・オリンピック・ミュージアムまで登りの徒歩で約20分で到着。チケット代は135クローネ(日本円で約2,000円)と結構高い。中に入ると、いくつかが最新の展示に替わっている。先ず、オリンピック休戦のコーナーができていて、そこには2018年平昌冬季大会の統一旗の入場行進や韓国チームの公式ユニフォームも展示してある。ユニフォームには青色の統一旗のワッペンが縫い付けてあった。様々なオリンピックの平和のシンボル(聖火、リレー、象徴的放鳩)などと各大会の放鳩のVTR映像も流されていた。長野の映像もあった。クーベルタンやオリンピック憲章の根本原則も書かれていて、申し分ない展示であったと言える。第2に、2016年のユースオリンピック関連のものは最終コーナーに展示してあった。トーチやボランティアのユニフォームが展示され、VTR映像も流されていた。扱いは多くはないのが残念!
その他の展示は、2016年の開館当時と同様にノルウェーのオリンピック史がインタラクティブな映像マシンも設置して、自国のオリンピック史を学べるようになっていた。当然クロカン文化の国、それが多くなっているのは仕方が無い。室内はジャンプ台と空中はオーロラ風にデコレーションされ、なかなかの飾り付けであった。バイアスロンのシューティング・シミュレーションも楽しめるようになっていた。一発も当たらなかったが。
続いて、ミュージアムを出てジャンプ台に向かう。オリンピック・パークと名付けられた一角には選手村の跡地がホテルとアパートになっていた。その斜面の上方部分がオリンピック・パークである。ジャンプ台まで歩こうとしたが、中間でもう20分位かかりそうなので歩くのはここで断念することに。ジャンプ台と聖火台を遠くに眺めながら写真に収めておいた。聖火台は2つが見えた。このジャンプ台では、夏でもラージヒルとノーマルヒルで飛んでいた。ジャンプの強化練習か何かであろうか。
続いて、ハコンホールに向かう。YOGの時にはLearn & Share(旧CEP)会場だったところ。YOGのシンボルマークと公園に設置されていた聖火台がここに移されていた。ハコンホールにはOlympic Toppenと記されていたので、ここもノルウェーのトップ選手の強化施設ということであろう。ハコンホールには、2016年に見たときには、1994年リレハンメル大会の時の象徴的放鳩に使われた地球型の卵とハトが飾られていたが、今回は入ルことができなかったので確認することができなかった。ハコンホールの隣のクリスティンホールとユースホールも遺されていた。どのような使い方をされているかは、ここも中には入れなかったのでわからなかった。カーリング施設にもYOGのエンブレムが飾られていた。YOGのレガシーとしてこれらの施設がどう使われているかが問題であろう。
9月7日:ノーベル平和センター
ノーベル平和センターに向かう。建物の中の一部が工事中であったが、2階の展示は見物はできる。携帯で当センターのサイトにアクセスして日本語の音声ガイドが聞けるのも良い。2階では、歴代の平和賞受賞者の写真とメッセージを見ることができるコーナーが準備されていた。初代の受賞者のアンリ・デュナン(国際赤十字の設立)、オリンピアンの銀メダリストで平和賞を受賞したイギリスの政治家ノエル・ベーカー卿、キング牧師、オバマなどの写真を撮っておいた。この中に、佐藤栄作氏の写真があるのが何とも異質な感があった。今年の受賞者の”I CAN”の展示が多くあった。最新の受賞者がこのような展示をするのであろうかと思う。ノーベル平和賞だけがここオスロの市庁舎のホールで授賞式が執り行われるが、そこも見ることができるようである。
最終日の8日に市庁舎(シティ・ホール)を見物。凄く広いホールであった。昔使っていた会議室等も見学することができた。平和賞授賞式の写真パネルが飾ってあったが、オバマ大統領受賞時の写真も飾られていた。
同日夕方4時から:ホルメンコーレンのスキーミュージアム
学会のソーシャル・プログラムの一つで、ホルメンコーレンのスキージャンプ台とミュージアム見学に地下鉄で向かう。30人の集団なので移動に手間取り、ガイドのツアーに間に合わなかったようである。しかし、特別に短時間のツアーを頼んでくれたようで、急いで2手に分かれ、私たちのグループはエレベーターで最上階のジャンプ台のてっぺんまで登った。強風と風が冷たくてコートを持っていて大正解であった。
このジャンプ台は1952年オスロの冬季大会の会場であったが、その後何回か改修され、今でもジャンプ競技に使われている。高いところにあるのでオスロの町も一望でき、良い観光地になっているようである。ミュージアムの展示もノルウェーのスキー文化の誇りが一杯感じられる展示である。最古のスキーや狩りをするためのストック、ビンディングなども展示してあったし、テレマーク地方のスキー文化展示も。また、ノーベル平和賞受賞者でもあるフリチョフ・ナンセンの北極探検も国の誇りの一つなのであろう。彼らが使ったスキーや橇やテントなどがしっかり展示してあった。しかし、1952年のオスロの冬季大会時のジャンプの様子が展示されていないのが残念であった。
ここはもしオスロを訪問したら多くの人に是非とも訪れて欲しいところである。しかし、ガイドがいないと展示の詳細が分からないのはミュージアムとしては少々残念である。ここに、日本ジャンプ界のレジェンドである葛西選手の板が飾ってあったのが嬉しい限りである。ジャンプ台のバッケンレコードの女子の部に高梨沙羅の名前があったのも嬉しい。ここでは、フライイング・ジャンプの大会が開催されているようだ。