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2012年「第8回IOC国際スポーツ、文化、教育会議」に参加して

2013 年 3 月 30 日 Comments off

執筆:舛本直文(首都大学東京・JOA理事)

第8回目のIOC国際スポーツ・文化・教育会議が2012年11月25-27日の間にオリンピック都市アムステルダムで開催された。JOAからは和田専務理事を始め、田原、來田、荒牧、大津、舛本の6名(その他のJOA会員:水野JOA副会長、中森理事、桶谷会員)が参加して情報収集と意見交換を行ってきた。日本からはその他に2020年オリンピック招致委員会、文科省、スポーツ振興センターからも多くの参加者があった。その様子を簡単に報告する。(ただし、会議に関する受け取り方は個人的なものであり、他のメンバーは違った感想をお持ちのはずであろう。)

<11月25日(日)>
午前中はIOC Conferenceのツアー。和田、荒牧、大津の面々とEducationツアーに申し込むが、荒木田さんはキャンセル待ちとのこと。うまく参加することができた。バス1台分が定員のようである。オリンピックスタジアムに近づくと聖火台が遠望できる。建物が新しくなっているようである。スタジアムをバスで1周する。オリンピックの歴史家が1936年ベルリン時に持ち帰った樫の木、聖火台の大修理、ヨハン・クライフ・コーナーなど説明してくれる。入り口には聖火の炎が灯り、入り口のエントランスにはオランダのスポーツ殿堂のアスリート達の名前が刻んである。中には、オリンピック・ミュージアムが整備され、グランドは現在も大活躍のようである。お茶を飲んで2本のレクチャーを聴く。ミュージアムの説明とアムステルダムのスポーツ振興に関するプレゼンである。サンドイッチの簡単な食事後にまたプレゼン。今度はサッカーのworldcoachesのシステムである。その後はまたミュージアムに移動してサプライズのイベント。聖火台の改修の際にタイムカプセルを発見したとのことでオランダのNOC会長にプレゼントされた。
夜は開会式とレセプション。観光クルーズ船がホテル近くのホテル専用桟橋から出発。港からマハレの跳ね橋まで夜のクルーズで観光し、旧港のマリタイム・ミュージアムでレセプションと開会式が執り行われた。桟橋にはレプリカであるがアムステルダム号という大きな帆船が係留されている。退役軍人らしい合唱隊が躍動するような歌で迎えてくれる。雰囲気がいいミュージアムでのディナーと開会式が執り行われた。IOC芸術賞art awardの授与式では、IOC賞はロンドン開・閉開式の総合監督であるDanny Boyleが受賞。絵画と彫刻部門の表彰も行われ6人が表彰された。しかし、文化プログラムというには少々パフォーマンスが今ひとつか。若者たちが中心の演技と、輪を使った力業のパフォーマンスを楽しみながらの食事会であった。

<11月26日(月)>
今日が本格的な会議の開始。9:00に全体会が始まる。ガンガ・シトレの開会の挨拶の後、コミッションの委員長であるニコロウNikolou氏の司会でスピーチがすすむ。IOCのRogge会長のスピーチはVTR録画しておいた。UNESCOのEngida副事務局長のスピーチも力強い。ECのスポーツ部門のスピーチに続き、オランダの女性スポーツ大臣Schipper氏のスピーチもある。彼女は最後にRogge会長の功績をたたえてオランダからの勲章を授与した。Q & Aでは、いくつか質問があったが、世代間格差、ジェンダー間の問題指摘があり、もっと若い世代に魅力的な会議にならないかとの質問が面白かった。また、「スポーツが世界を変える」というコンセプトは理解できるが、しかし現実を見れば、政治的挑戦や経済的挑戦などの問題が多いという指摘もあった。Rogge会長の返答では、彼はスポーツの持つ力を指摘し、平和重視を主張していた。さらに人権、特に難民への対応の指摘があり、これからはIOCとUNで人権に関する取り組みがクローズアップされることになるであろうという予感がした。
全体会の2本目は台湾のWu IOC理事の司会によって、「スポーツによる教育強化」がテーマとして話し合われた。結構時間が伸びてしまったが、UNOSDPのLemke氏のプレゼンは体育教師と言うこともあり力強く印象的であった。Kemp氏によるビデオゲームによるオリンピック教育の紹介は、やはり子供達がセデンタリーになり、問題が多い提案であると感じた次第である。
午後の第1分科会ではOlympic Valuesの分科会に出た。オランダのVan Leeuwen氏によるIOCのオリンピック・バリューのexcellence, friendship, respectを’Me, You, We’と対応させて理解する発表は、なるほどと感心させられた。またWADAのKoehler氏の発表が,ドーピング問題を根本から疑問視しながら考えさせるチャレンジングなもので結構面白かった。彼も指摘したGlocalな発想は大いに首肯できる点であった。
午後のもう一つのLegacyの分科会はミューラーMuller氏の司会進行。様々な大陸や国でのイベントによるレガシー形成である。インスブルックIWYOGのMs. Pili氏のLegacyの報告を楽しみにしていたのであるが、残念ながら今ひとつの報告であった。アフリカのケース報告はやはり特殊である感じが否めなかった。

<11月27日(火)>
会議の3日目の最終日。全体会の座席にプレゼントのチョコが置かれている。同時にいろんな色の紙がおいてあるが、これが後のグループディスカッションのメンバーの組み合わせとなる。全体会ではリビアの世界遺産でのオリンピック学習とイタリアのラッパーによる歌を用いた反ドーピングへの取り組み事例が報告される。その後はグループディスカッションに移行。私たちのグループに与えられたテーマは、1.学校でスポーツを普及するにはどうするか? 2.普段の生活でオリンピック・バリューを普及させるためのユースの役割は? というものであった。6人のグループであるが、司会進行がボリュームアップしてどんどんしゃべるため、メンバーの話がよく聞き取れないのが残念。私自身は、学年別のカリキュラムの重要性、課外と正課体育の違いなどを話しておいた。第2のお題に対しては、アメリカやジャマイカにはユースオリンピック大会YOGの後にアウトリーチプログラムがあるということ。日本には残念ながらないと話しておいた。IOAのコスタスCostasによればギリシャもないそうだ。やはり残念なことである。IOCは伝達プログラムの重要性を伝えるべきであろう。ここで、アメリカの参加者アマンダは女子サッカーの経験者。ナデシコがロンドンの決勝で負けた試合を見たと話した。ワンバックとモーガンがいいプレーンヤーだというと、日米はいいライバルだし、米国はもう若返りを図っているという。日本の育成システムはどうであろうか?
このグループディスカッションの中で、リビアの参加者達から「2020年の日本の招致団の姿が見えないがどうしたのか?」と聞かれた。確かに、この日は竹田、水野、中森、荒木田氏の招致委員会の姿が見えない。閉会式にも不在であったのは残念。招致活動としては最後の別れも言ってよろしくというのが大切なことであろうと感じた次第である。別の何らかのミーティングが入っていたのかもしれないが、、、。リビアの女性から東京招致のpinが欲しいと言われたが、1個しかないので申し訳ないと断る。実は余分に持ってはいたのだが、まだ招致のプロモーション活動は禁止されていると聞いていたからである。
全体会の最後は、若者たちが壇上に登っての報告である。彼らはPolicies政策、Practice練習、Possibility可能性の3つのPのテーマで3人ずつが発表し、フロアとのQ&Aを展開する。司会役が結構強引にディスカッションを進める。台湾のWu IOC理事がIOCの中にYouth Commissionを作る計画を紹介した。来年の2013年が好機だという。司会がしっかりそのことを理事会に伝えるように釘を刺す場面もあった。全体会の最後にアムステルダム宣言を採択して会議が終了。
今回は多くの日本人グループが参加していたが、プレゼンや発言がなかったのが残念であった。日本のプレゼンスが全く見られなかったといってもよかろう。この会議では、競技ではなくスポーツ、それを教育で振興や展開していく、そのためには教育者(広い意味での、コーチや監督、トレーナーや親など取り巻き全員)の重要性が宣言にて触れられた。一方でYOGを活用して世界的なインパクトを高めていく方向も捨てられてはいない。ロッテルダムを始め、グラスゴーも含め2018年夏季YOGに5都市が手を上げている。このような日常的なスポーツと頂点のエリートスポーツの2方向からスポーツを普及・振興し、さらに一層教育によってスポーツを広め、それによる平和な社会を希求するというIOCのスタンスを確認した会議であったといえる。

参考:会議の様子とアムステルダム宣言は以下のIOCサイトで見ることができます。
http://www.olympic.org/news/8th-world-conference-on-sport-culture-and-education-issues-call-for-action/184248

11月26日の全体会でオランダから勲章を贈られたIOCロゲ会長。右はオランダのスポーツ大臣

11月27日の最終日の全体会で壇上に並ぶヤング・アスリート達。中央が司会者
11月27日の最終日の全体会で壇上に並ぶヤング・アスリート達。中央が司会者