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図書紹介 No.1

2008 年 12 月 27 日 Comments off

松瀬 学著

『五輪ボイコット–幻のモスクワ、28年目の証言』     

 

 知る人ぞ知る事実だが、日本は1980年にモスクワで開催された第22回オリンピック競技大会をボイコットした。当時のジミー・カーター・アメリカ大統領の呼び掛けによって生まれた事件だった。西側諸国の一員である日本は、その呼び掛けに追従せざるを得なかったのだ。「政治とスポーツ」の”悪例”として、このモスクワ・オリンピックは有名である。
 だが、日本国内において、このモスクワ・オリンピックのボイコットの全貌が紹介されることはなかった。日本体育協会、日本オリンピック委員会(JOC)が、公表することを潔しとしなかったからだ。日本スポーツ界には、政府からの何がしかの補助金が出されているからでもある。そのことがモスクワ・オリンピックをボイコットさせたと言っても過言ではあるまい。
 2008年6月20日に新潮社より刊行されたノンフィクション作家・松瀬学著の『五輪ボイコット–幻のモスクワ、28年目の証言』は、当時の関係者17人にインタビューし、全容を解明しようとした力作である。
 恥ずかしながら告白しておくと、私は2005(平成17)年11月1日から翌年3月17日まで、137回にわたり、ライブドアのインターネット『PJニュース』に「モスクワ五輪ボイコットの真相–激動5カ月間のドキュメント」を連載した。これが松瀬氏に『五輪ボイコット』を書かせた一つのきっかけにもなっていると自負している。
 そのために推奨するわけではないが、日本スポーツ界のさらなる発展のためにも、JOA各位に、本書を読んでもらいたいと念願する。
(伊藤 公)