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埼玉県の「都市ボランティア選択型研修」にて講師を務めました:報告

2020 年 1 月 31 日

執筆:唐澤あゆみ
東海大学グローバル推進本部グローバル推進室/JOA会員

 東京2020大会にて埼玉県の都市ボランティアに決定している方々に、2016年リオデジャネイロオリンピックで大会ボランティアとして活動した私の経験を、幸いにも私の生まれ育った埼玉県で共有できる機会をいただきました。(写真①,②)

 全国に先駆けて埼玉県では、2019年1月より埼玉県の都市ボランティア向けに研修を開始していました。基本研修やリーダーシップ研修、救命救急講習など様々な研修があるうち、「選択研修」の講師として1日3コマを2日間担当しました。この選択型研修では、観光・安全・外国語など40種の豊富なメニューの中から、都市ボランティア自身が関心のあるものを選択して受講することができます。2019年6月から12月までの8日間でのべ11,065人が受講しました。今回この選択型研修の中で、「海外でのスポーツイベント参加者の体験談」という講座名のもと、樋口栞菜JOA会員と共に1コマ60分の講座を行いました。

 まず樋口会員より、アーチェリーのアンダーカテゴリーの世界大会「Youth Archery World Championship」に選手として参加した際の経験をもとに、大会に臨む選手たちの心理面について話がありました。選手は試合前と試合後では心理状態が異なるようで、特に試合前は周囲からの期待やプレッシャーを感じて、極度の緊張状態に陥っている可能性が往々にしてあるということです。そんなとき、ボランティアの方々が笑顔で挨拶しても、不安や緊張から余裕がなく、会釈や笑顔などの返事がないかもしれません。返事がないことに対して不快に思うかもしれないけれど、選手に対して嫌悪感を抱かずに、選手の気持ちを察して応援してほしいとのことでした。まさに選手でないと分からない心理面での経験から、受講者に向けて説得力があるメッセージになったかと思います。

 次に、私が2016年リオデジャネイロオリンピックに大会ボランティアとして参加した際の体験談を話しました。私は「大会」ボランティアとしてリオオリンピックに従事しましたが、今回の講座の対象者は埼玉県の「都市」ボランティアでした。そのため、私のリオでの大会ボランティアとしての活動内容よりも、ボランティア活動を通して得た所感を中心に共有しました。私が今回の講座で最も伝えたかったことは、「自主的に行動する」ということです。私自身、リオではシフトの日に配属先に行っても、仕事をせずに1日が終わってしまうことも多く、仕事ができない悔しい思いをしました。私が所属していたチームのボランティアリーダーのマネジメント不足ではないかとリーダーを責める気持ちもあったことは確かです。しかし、ボランティアのユニホームを着て会場内を歩いていると、世界中から集まった観客の方々から「この競技会場にはどのように行けばいい?」など案内を頼まれることが多いことに気がつきました。そして、会場内を積極的に歩き回って会場案内などすることによって、微力ですが大会に貢献できたと思っています。東京2020大会でも、ボランティア活動に対するイメージや理想と自分の仕事量が合わずに、不満を抱く方がいるかもしれません。私の講座に参加してくれた方々が一人でも多く、小さなことでも自分でできることを探して自主的に行動してほしいと思います。そして、ボランティア活動に対するやりがいを見つけてほしいですし、楽しくボランティア活動をしてほしいです。

 樋口会員と私からの話の後は、2人でクロストーク形式をとり、お互いに質問をし合いました。(写真③)このクロストークの狙いは、数多くの講師陣がいる中で、私たち2人が圧倒的に若い講師であったため、若さを生かしたアットホームな雰囲気を目指すことでした。もちろん事前に原稿は作成しておきますが、実際は本当に質問し合っているような、私たちが会話をしているような雰囲気が出るように努めました。樋口会員からの「ボランティアとして異国の地で活動するにあたって不安だったことは?」という質問に私が答えれば、私が反対に「選手として海外の大会に出場するにあたって不安だったことは?」という質問をして樋口会員が答えるなど、お互いに質問をし合いながらあくまでも選手目線とボランティア目線を大切にしました。また、私がリオのバスターミナルで迷ったときに現地のご婦人が助けてくれた経験を回顧し、今考えてみれば大きなターミナルの通路の真ん中で地図広げて、そこを通る方々の邪魔になってしまっていたなと当時の状況を客観視し、声がけのタイミングなど都市ボランティアの方々がどのように海外の方を助けられるかヒントになるよう落とし込みました。受講者からはクロストークの評価が非常に高く、私たちの受講者を飽きさせない工夫が功を奏したと思います。

 受講者のアンケートから、私たちの講座自体が非常に高い満足度を得られたと安心しています。しかし、この結果に満足せず、次回このような機会をいただいた際は、参加者の関心をもっと寄せられるような講座を目指していきたいと思います。受講者が思わずメモをたくさん取りたくなるような、次から次へと質問が出るような、そして私の話からオリンピズムやオリンピック・ムーブメントなどにも興味を持ってもらえるような講義ができるよう工夫をしていきます。私としては、今回は私のリオオリンピックでの経験を共有することに精一杯で、その経験をオリンピズムやオリンピック・ムーブメントの要素と結び付けられなかったことが反省点です。

 埼玉県の都市ボランティア選択型研修で講師を務めるにあたり、粟沢JOA会員をはじめ、企画・多方面で調整をしてくださった埼玉県の職員の方々、当日の運営を担当してくださった株式会社セレスポの方々など多くの方のご尽力がありました。ご尽力いただいた方に、心より感謝を申し上げます。

【概要】
埼玉県の都市ボランティア選択型研修
「海外でのスポーツイベント参加者の体験談」
・2019年7月7日(日)  @埼玉会館
・2019年12月15日(日)            @ウェスタ川越

【ご協力】
関口 剛啓 様(埼玉県オリンピック・パラリンピック課 ボランティア担当)
粟沢 竜彦 様(JOA会員)

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