2017年2月シンガポールのスポーツハブ視察記
執筆:舛本直文(首都大学東京特任教授/JOA理事)
2017年2月3日(金)
シンガポールのSport Hubの2度目の見学である。この施設は、メインスタジアムの他に、水泳施設、屋内競技場、サッカー場にテニスコート、レガッタ施設などほとんどの競技施設が集まっている。ショッピングモールの中心にはスポーツクライミング施設が設置され、多くの若者が挑戦しているのがよく目立つ。このハブは、ショッピングモールにレストラン、温泉にシアターなどの複合施設で公共交通機関のMRTも走っている。NOC、NPC、スポーツ科学研究所やトレーニング施設、各競技団体の事務所も入った総合スポーツ施設である。これがシンガポールのスポーツ界には良い環境を提供することになっているのであろう。
今回は特にスポーツミュージアムを中心に見学した。ガイド付きのツアーを友人のKimさんが用意してくれている。同じCHIJ小学校の体育教師のValerieが同行してくれた。ガイドにこのミュージアムのコンセプトを尋ねる。展示はシンガポールスポーツの歴史と発展を中心に、子供たちが興味を持って学べるように心がけているとのこと。さらには子供たちがチャンピオン達に触れてこの先のインセンティブになり、選手を目指したり支えるボランティアになったりするようなマインドを育てることと、ガイドもKimさんも話していた。Valerieによれば、多くの小学校や中学校の体育の授業で見学にも来るとのことである。子供たちは入館料が無料である。
ミュージアムの入り口には旧スタジアムのベンチを再生した壁が出迎えてくれる。その先には、シンガポールのスポーツ殿堂Hall of Fameに入った52名を称えたプレートが飾ってある。シンガポール初のオリンピックメダリストのTAN HOWE LIANG氏の名前もある。1985年に殿堂入りしている。この殿堂にはオリンピックのメダリスト、アジア大会、コモンウェルス大会の金メダリストが名前を連ねることができるそうである。Kimさんの親族達の名前もあった。
Sport Hubのwebsiteには常設展示の5つのテーマが掲げられていた(巻末参照)。ミュージアムの入り口にはサッカーボールの皮でできたオブジェ。ミュージアム内の展示はシンガポール初のスポーツクラブなど、、。やはり英国統治下の影響が強いスポーツであるヨットや乗馬などのクラブの展示が先である。水球には力が入っているようで、Kimさんの義父のTAN HWEE HOOK氏や甥御さんのTAN ENC=BOCK氏も殿堂入りしていた。さらに、彼らのメダルや水着も展示してあった。メダルなどは寄付ではなく借用しているとのこと。昨年のリオ大会の水泳競技でオリンピック初の金メダルを獲得した選手のメダルや展示はまだであった。おそらく今年に殿堂入りするだろうとはKimさんの談。彼はテキサス大学に留学し、今もそこでトレーニングしているとのこと。
旧スタジアムの入り口のマシンやベンチ、照明やアナウンススピーカーなど旧スタジアムの遺品をレガシーとして展示もしていた。現在のメインスタジアムは旧スタジアムの跡地に作られ、開閉式のルーフでコンサートなどもできるようになっている。足下からは冷気の空調も完備されている。
ミュージアムの展示には、スポーツ競技だけでなく、シンガポールのスポーツ教育用の展示パネルも多い。人権やアンチドーピング、フェアプレーなどの啓発パネルも飾ってある。ミュージアムの中心部は2010年のYOG関係でまとめられている。中には、オリンピック大会の公式ポスターやトーチも(すべてではないが)飾ってある。3台の大きなビデオスクリーンも設置され、その一つでYOGの開会式の映像を映し出している。最後にシンガポールYOGのマスコット達の所で記念撮影である。
時間が無いのでSHIMANOの自転車ミュージアムはざっと済ます。Kimさんが私の自宅の場所を知りたいというのでGPSの画面で教えてあげる。その後はメインスタジアムの見学である。スタジアムの座席は赤と白のシンガポールのナショナルカラーで彩られ、開閉式のルーフと座席に下から冷気が出て暑さ対策もしっかり取られている。サッカーなどの時には55,000人収容のスタンドに仮設の座席を増設できるそうである。障害者の車椅子用の観戦スペースも多く取られている。ここでは陸上、ラグビー、サッカー、コンサートイベントなどに使うそうである。スタンド外のコンコースは3色のレーンで、w-upや一般の人たちも走れるようになっている。
シンガポール・スポーツミュージアムのサイト
ttp://www.sportshub.com.sg/Venues/Pages/singapore-sports-museum-permanent-galleries.aspx