会員レポート Vol.6_No.3
オリンピックムーブメントとしてのワールドゲームズ(WG)
執筆:師岡文男(上智大学)
2000年10月27日、IOCと国際ワールドゲームズ協会(IWGA)は「IOCは各国オリンピック委員会(NOC)がWGに参加する各国代表選手団を支援することを奨励する」など9項目が盛り込まれた「相互協力に関する覚書」に調印し、WGはオリンピックムーブメントとして位置づけられた。2009年7月16日(木)~26日(日)の11日間台湾の高雄で開催された第8回WGには、84の国と地域から26公式競技・5公開競技に2,908名の選手が参加し、バンクーバー五輪(82カ国・地域2600名)を若干上回る規模の大会に成長してきている。開会式では、IOCの猪谷千春副会長(当時)が挨拶し、IOC委員、IF役員、NOC役員なども数多く出席した。
WG競技から五輪競技になったスポーツは8競技(バドミントン、野球、ソフトボール、テコンドー、トランポリン(ソロ)、トライアスロン、ビーチバレーボール、ウエイトリフティング(女子))あり、2012年のロンドン五輪の新競技の候補にWG競技のスカッシュ、空手、ローラースポーツ、ソフトボール、7人制ラグビーがとりあげられ、最終的に7人制ラグビーが採用される一方、五輪競技からはずされたソフトボールがWGの公開競技に戻ってきたり、WGと五輪との関係は年々深まり、大会ロゴにも五輪マークが使われている。
WGの目的のひとつ「民族、国家間の紛争や思惑に利用されない国際スポーツ大会の実現」は、100%とはいえないものの、今回ぎりぎりの線で一応守られた。大会組織委員会が大会開始直前になって「中華民国 馬英九総統」が開会宣言を行うことを決定し、大会中「中華民国(Republic of China)」の名称を使ったり、中華民国国旗を会場に持ち込むことを許可しても、中国選手団は表立った批判をすることなく、「開会式当日の夜便で到着したために参加登録手続きが間に合わなかった」「帰国便のスケジュールの関係で」などの理由で中華民国の馬英九総統が出席する開会式・閉会式に欠席しただけで、競技には予定通り参加し、モスクワやロスアンゼルス五輪のようなボイコットは起こらなかった。
次回2013年コロンビア カリWGは初の南米での開催であり、2016年の初の南米での五輪、リオ大会に先駆けての大会であるだけに、WGの存在意義がますます評価される大会になることが期待されている。