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ユース五輪(YOG)の文化·教育プログラム: メダルではない真の価値を求めて

2010 年 8 月 15 日


執筆:衣笠泰介(シンガポールスポーツスクール)

ユース五輪とは

今年2010年8月、シンガポールにて第一回夏季ユース五輪(以下YOGとする)が開催される。YOGのコンセプトは2007年7月6日にグアテマラシティでの国際オリンピック委員会(IOC)総会にて、ジャック・ロゲ会長が明らかにした。ロゲ会長は若者のスポーツ離れや体力の低下による健康不全や肥満の問題を打開するため、若者にもオリンピックを体験させようと発案し、IOC委員もその提案を了承した。

YOGは世界中の14歳から18歳までのエリートユース選手約3,500人が26競技に参加するが、一番の特徴は若者へ多岐の文化·教育プログラムが行われることだ。そこには「競技の場というより、オリンピック教育を重視したい」(en.beijing2008.cn/50/19/article214041950.shtml)という IOCロゲ会長の強い思いがある。そこで、オリンピックバリューである卓越、友情、尊敬がYOGの文化·教育プログラム(Culture and Education Programme,以下CEPとする)にどう組み込まれているかを紹介していく。

YOGの文化·教育プログラムの内容

YOG大会前にはユーススポーツカンファレンスやユースキャンプ、親善大使プログラムなど(http://www.singapore2010.sg/public/sg2010/en/en_culture_education.html)が行われ、大会期間中には目玉としてCEPがある。CEPは、オリンピックバリューを包括的に理解すること、具体化すること、表現することを目的として、5つのオリンピック教育のテーマを掲げる。
1.オリンピズム:エキシビジョンや様々な活動を通して近代オリンピックの起源や思想、仕組み、発展について学ぶ
2.スキルの発達:ワークショップを通して自己啓発や人生の移行期のマネジメントを含めたプロスポーツ選手としてのキャリアを学ぶ
3.健康なライフスタイル:ワークショップやエキシビジョンにて健全な食生活やストレスマネジメント、アンチドーピングを学ぶ
4.社会的責任:地球市民として環境問題や持続可能な社会、社会における人間関係について学ぶ
5.表現力:デジタルメディアや選手村でのフェスティバルを通してコミュニケーションを学ぶ

これらのテーマを基に以下の7つの形式で、50を越す楽しくインタラクティブなプログラムが用意されている。
1.チャンピオンたちとの会話:オリンピアンと会話をしながら競技生活やオリンピックバリューなどを学ぶ機会
2.ディスカバリー活動:エキシビジョンやゲームを通してボードゲームでの発見や栄養の知識などを問う機会
3.世界文化村:参加国205の国々の文化をブースで紹介して多様な文化を称える機会
4.コミュニティ活動:社会的責任の観点からコミュニティにどう還元できるかを考える機会
5.芸術と文化:ダンスパフォーマンスや芸術作品の展示などで芸術と文化について考える機会
6.島での冒険:島全体を使ってのチームビルディングでお互いを尊重し合うこと、友情を学ぶ機会
7.野外調査:公園や貯水池を訪れ、環境問題や持続可能な社会について考える機会

12日間の大会期間中、上記の6と7以外の多くの活動は、選手村において30-60分間単位で行われる。6と7の野外活動は各自の競技終了後などの自由時間に半日もしくは1日参加が可能。YOG組織委員会はCEPを有意義なものにするため、選手への参加賞や特別に表彰するなどプロモーションを積極的に行う予定だ。また選手だけでなく、コーチや一般人もCEPを体験できるプログラムもある。最終的にすべての参加者が競技、文化、教育のプログラムに満足し、若者にスポーツを通して生きがいを見つけてもらうのがYOG組織委員会のねらいだ。

提言

YOGは「競技、文化、教育」の均整のとれた国際イベントとなるだろう。その中でもCEPはIOCの新しい試みであり、YOGの持つ可能性は計り知れない。ここでJOAとして積極的にどう貢献できるかを考えていく必要性がある。選手村の日本ブースにおける日本のオリンピック教育の紹介、次回YOGでのCEPワークショップへの提案、若者にオリンピックバリューやスポーツの面白さを学習及び体験できるYOGラーニングセンター(http://www.singapore2010.sg/public/sg2010/en/en_about_us/en_yog_learning_centre.html)のような施設の設立などが挙げられるだろう。一方で、若者やコーチに対して全中やインターハイなど国内大会だけに目を向けるのではなく、YOGへの参加がグローバルな視野に立った国際人育成につながるというメッセージを伝えていくことも重要だ。YOG参加者のオリンピアンが次世代のリーダーとなり、オリンピックムーブメントを広めることで、彼ら自身がレガシーになっていくのではないか。

私がシンガポールで働き出したのが2004年のころ。2008年2月IOCロゲ会長の口から「YOG第一回開催地はシンガポール!」と発表された時はそこに居合わせていて、その感動を今でもよく覚えている。つくづく思うがオリンピックには人々に夢を与えたり、感動させるパワーがある。YOGがその最大の檜舞台となるかどうかはまだ分からない。だが若者の勝利至上主義やオリンピックバリューなどをYOGを通じて見直すいい機会になればと切に願う。オリンピックのメダルではない真の価値を求めて...

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